【ポイント】
- 自己分析は自分のためではなく、企業人事のためにやる。
- 自己分析は、ポジションとの親和性があることを証明するために行う。
- さらに、自己分析を通じてその証明が本物であることをさらに証明する。
自己分析の本質
「自己分析」をする理由は2つあります。それは、人事の「疑問」と「警戒心」を解くためです。
ここで大事なのは、主語が「人事」だということです。
「自己分析をやれば自分にぴったりの会社が見つかる!」とか「最適な仕事が分かる!」というのは、全くもってナンセンスです。
考えてみてください。自分にぴったりの会社がどうかは、実際に働いてみなければ分かりません。最適な仕事が分かったところで、興味の無い仕事であればやろうとも思いません。
「自己分析」を自分を知るための手段だと捉えることは本質からズレています。転職活動は、相手が自分を知ってはじめて意味を成すものであり、自己分析を行っていく上では自分のためにやるのではなく企業人事のためにやるものであるという視点を持って臨むことが大切です。
人事の疑問
採用活動において、企業の人事担当者が最も重視するのは、「この求職者が本当に求める経験・スキルやマインドセットを持っているのか?」という点です。つまり、ポジションとの親和性が何よりも重要視されます。
これは、単に「優秀な人材を採る」という話ではなく、「企業の求める役割を適切に担える人物か?」を判断するプロセスです。企業が募集要項に記載する「求めるスキル・人材像」は、そのポジションで成果を出すために不可欠な要素を示しています。例えば、
- 営業職 なら、爆発的なコミュニケーション能力や交渉スキルが求められることが多い。
- 経理・財務 のポジションでは、綿密な作業ができる慎重な性格や、連結決算の経験が必須とされることがある。
- 法務部門 なら、契約交渉やコンプライアンス対応の経験が重視される。
- エンジニア職 なら、特定のプログラミング言語のスキルや、問題解決能力が問われる。
このように、企業はポジションごとに異なる適性を求めているため、求職者に対して「本当にそのスキルや経験を持っているのか?」を面接で確認しようとします。
企業が知りたいのは、求職者の「やりたいです!頑張ります!」という熱量ではなくて「このポジションにふさわしい根拠」であり、それを説明するためには過去の経験や実績を整理し、論理的に語れるように準備する必要があります。
例えば、営業職に応募する場合、「私は人と話すのが好きです!」ではなく、
✔ 「前職で新規開拓営業を担当し、半年間で◯件の契約を獲得しました」
✔ 「顧客との関係構築のために△△の工夫をし、顧客満足度を◯%向上させました」
といった具体的なエピソードを交えて話すことで、「この人なら活躍できそうだ」と企業に納得させることができます。
このように、自己分析は「自分のスキルが企業の求めるものと一致していると証明する」材料を探すための作業なのです。
人事の警戒心←最重要
上述した「人事の疑問」=「ポジションとの親和性」は、多少盛ることが出来ます。例えば、リーダーシップを必要とするポスト。前職ではサポート役の立ち回りが多かったものの、ちょっと脚色して○○人をマネジメントしてましたみたいに言ってしまえばいいのです。
しかし、人事担当もバカではありません。むしろ、人材領域のプロです。
意識的か無意識的かはさておき、「求職者は漏れなく誇張している」という偏見を人事担当は持っています。言い換えると、人事担当は求職者の信ぴょう性を疑っているわけです。
したがって、人事担当者は求職者の発言を額面通りには受け取りません。**「多少は盛っているだろう」「実際のスキルや経験とはギャップがあるかもしれない」**と疑いの目を向けています。この前提を理解しないまま、ただ「自分はこのポジションに適しています!」と主張するだけでは、面接官の警戒心は解けません。
だからこそ、自己分析を通じて「ポジションと親和性が人間であることを証明する」ことと併せて、「その証明自体が本物であることをさらに証明する」必要があります。いわば、「証明の証明」です。
まとめ
間違っても、自己分析の目的は「本当にやりたい仕事を見つける」ためではありません。自己分析はwhat=「何が出来るのか」とwhy=「なぜ出来るのか」という2つを洗い出すことで、人事担当の懐疑心を和らげ「この人は信頼できる」と思わせるための戦略的な準備です。
これから自己分析を行っていく上で、その目的が自分なのか相手のなのか。ベクトルの向きは、自己分析の結果に大きな影響を与えます。まずは、何のための自己分析なのか?ということをしっかりと理解するようにしましょう。